エコトピア・理想郷の続きです。海や森の色彩にはなぜ癒し効果があるのか。新宿や秋葉原の「騒色配色」は人によっては、なぜ疲れるのか。
関連色彩理論をご紹介します。
1 色彩とはなにか。
◆全ての物体には、私達が見ているような「色彩」は着いていません。森の緑、海の青、そして私達の顔には色はありません。
・・・なぜか。
◆色彩は太陽光線の電磁波を物体が反射し、それを私達の神経が電気信号に変換して脳に送り、赤や青として感じているからです。太陽光線は虹と同じ紫、青、緑、黄、橙、赤の波長の電磁波を含んでおり、全てを反射すると白。全てを吸収して反射しないと黒に見えます。木の葉が緑に見えるのは緑に感じる波長550nm前後の電磁波を主に反射しているからです。
上の図の白色光とは太陽光線のことです。
電磁波はエネルギーです。したがって、黒のように太陽光線の吸収率が高いと熱く感じることになります。
◆色彩の説明には次の言葉が基本概念として出てきます。
・色相・・・色の種類
・明度・・・明るさ
・トーン・・明度、彩度をあわせたもの
以上が色彩調和や色彩コーディネートの基本概念になります。森の色彩がなぜ「癒し」になるのか。環境の色彩プランにはなにが必要なのか。
次号では、そうした問題に関する学説等を紹介する予定です。
自然の中でもっとも見慣れた配色です。アメリカの色彩学者ルードが唱えた「色彩の自然連鎖」で色相環の黄色から右に流れる色相の位置が上のほうが明度が高く、下になると明度が低くなる配色です。心が落ち着く配色と言われています。ファッションカラーコーディネートで使われている理論です。
ナチュラルカラーシークェンスを逆転し、色相環の下にある色相を明るくしたものです。コンプレックス配色、不協和配色とも呼ばれていますが、現代では多く使われている配色で、見た瞬間にはっとする感じがあります。木の葉の色と青空の色の関係で、青空と緑の明度差と色相差が大きいと、目立ち、スカッとした感じがするはずです。ファッションに応用できます。
遠くからでも分かる色の組あわせ。視認性、可読性等。生活の場に応用されている配色です。
下はご存知、工事現場の表示看板。これを見ると誰でも「前方注意」の運転になりますね。ところで下の右は要注意のすずめ蜂。工事標識の配色は彼等に習ったと言ってもよいでしょう。トップレベルの目立つ配色です。すずめ蜂に刺されると大変なことになりますが、実は蜂は巣が襲われたと思う時以外は、まず、攻撃してきません。巣を揺らしたりしなければ30センチくらいに近づいても大丈夫。人類よりもずっと平和的な生き物です。森に入る時は連中の暮らしの場を荒さないように。
すずめ蜂の配色は危険信号。近づくなというメッセージということは納得できますが、左のハムシやテントウムシの配色の目的はなんなのか。難しい問題です。
みかんとサクランボ。おいしそうな色で注意を惹く存在です。誘感色と言って、人だけではなく、「おいしそう!」と、鳥に食べてもらい種を遠くに運んでもらうためだそうです。永い進化の歴史の中で変化してきた配色です。誘感色は赤、橙、黄色の暖色系の色です。
「毒だ!」
Aはヤマカガシ。Bは蝮。噛まれたら入院です。ヤマカガシの危険信号は分かりますが、同じ毒蛇なのに蝮の迷彩文様の意味がよく分からない。餌の蛙などを捕りやすくするためですかね。
DのベニテングダケとEのツキヨダケ。共に絶対食べてはいけないキノコです。ベニテングダケの派手なデザインの意味はわかりますが、ツキヨダケがなぜシイタケそっくりなのか。意地の悪い神様がいたのか・・・難しい問題です。ツキヨダケには猛毒がある。これは、今の私達の常識です。しかし、その常識は遠い原始時代まで遡って、餓えをしのぐために食べたであろう人達の犠牲によるところが多いのではないかと思います。
Cのテンナンショウ(房州マムシグサ)は実物を見ると「毒」という感じはしますが、遠くから見るとサクランボなどに近い誘感色です。なんのために? と、よく思います。
色彩心理について
森の色彩を考える前に人の生理および心理に色彩刺激がどのように働くか。代表的な事例を表にしました。
応用例の薬品パッケージでは赤、橙、黄色はビタミン剤や風邪薬、紺、青は頭痛剤や鎮静剤。ベージュ、茶、緑は整腸剤に多くなっています。
色彩心理に関しては沢山の実験データがあります。簡単にまとめたものをリンクしました。
色彩がなぜ生理、心理面に影響するのか。仮説ですが、波長別の電磁波のエネルギーが作用しているという考えが説得力があるように思えます。進化の過程の500万年を人は自然の中で生きてきました。夜の青の世界の中ではじっと静かに過ごしていた。その記憶が伝えられていて青(とくに夜空の紺)を見ると心が静まるという考えです。、
・・・・・つづく。