アンチエイジング

アンチエイジングという言葉は食品の広告には薬事法の規制により殆ど使うことはできません。訴求対象が男女共通の場合は老化防止。女性の場合は美容対策が含まれます。ただ、農産物の生産、販売にたずさわる者としては、自分達の作物の味覚や栄養と同様に、人の命の維持に関わる問題には無関心ではいられません。

 

もともと、アンチエイジングは広範囲の問題を含み、解明されていない事も多いのですが、さまざまな分野で研究が行われてエビデンスも蓄積されてきています。生命活動のエネルギーは細胞内のミトコンドリアで酸素を使って作られ活性酸素が生まれます。活性酸素は排気ガス、タバコ、飲酒、ストレスなどからも発生します。その結果、分子は構成する電子を1つ失います。その分子はフリーラジカルと言いますが、失った電子を細胞のタンパク質や脂質から取り戻そうとし結果として細胞に変化や障害をもたらします。フリーラジカル、活性酸素の発生⇒脂質、タンパク質の酸化⇒細胞や遺伝子の変性、障害というプロセスの中で病や老化、美容面での劣化が起こります。その変化を抑える効果の高い食品をできるだけ多く提供できたらと考えます。

 

 

 

抗酸化物質

活性酸素を取り除き、酸化の動きを抑える物質で体内でつくられるものと、食品としてとらなければならないものにわかれます。
■体内で作られるもの

◆酵素
 SOD( スーパーオキサイド・ディスムターゼ)
  ・・・・活性酸素を無害化

 グルタチオンベルオキシターゼ、カタラーゼ
  ・・・・過酸化水素を水に分解

◆タンパク質(アルブミン、ビリルビン、アボトランスフェリン、セルロプラスミ        ン、尿酸)
体外から摂取するもの
◆ビタミン、葉酸
◆ミネラル(セレン)

◆カロチノイド(αカロチン、βカロチン、リコピン、キサントフィル)

◆ポリフェノール類(フラボノイド、かてきん、アントシアニン、イソフラボン、ケルセチン)

 

ORAC値

オラックとは、OxygenRadicalAbsorbanceCapacityの頭文字を取ったもので,活性酸素吸収能力を示します。ORACは米国農務省(USADA),国立老化研究所で開発され,既に米国では多くの食品に抗酸化指標として表示がされています。しかし、オラック値を食品の広告に利用する傾向が目立ち、USADAでは2012年に公表していたオラックのデータベースを取り下げる事態になりました。オラックの数値が生産地、ロット、生育状況等により異なるため、消費者に誤った判断を強いることもあるとの理由からです。

日本の厚生省では1日の推奨消費量を野菜350g、果物200gとしていますが、これをORAC値にすると4,700になります。

 参考1 南房総エコトピアの商品関係のUSADAのORAC値の一部です。

加工状態によって数値が大きく変動します。
  クローブ (粉末)   314,446

    オレガノ (乾燥)   200,129

    ターメリック(粉末)  159,277
  バジル(乾燥)         67,553

    セージ           32,004
    生姜(粉末)          28,811

    黒胡椒           27,618

    アーティチョーク      9,416

    ブルーベリー        6,552

    バジル(生)          4,805

    イチジク            3,383

    レーズン            3,307

    紫キャベツ           3,145

    ブロッコリー              3,083
    リンゴ                 3,082
Trolox equivalent antioxidant capacity (TEAC) micromolTE/100 g

 

 

 

寄稿 植物の抗酸化物質と活性酸素・アンチエイジング
          
 

     (新)日本抗加齢医学会認定専門医・日本アンチエイジング歯科学会認定医・米国抗加

  齢医学会会員

  森永宏喜

 

ヒトが生命活動をするためにはエネルギーを生み出すことが不可欠です。最も効率の良いエネルギー産生は細胞内のミトコンドリアという小器官で行われますが、その過程で「活性酸素」が発生します。

活性酸素は遺伝子(DNA)、細胞膜や各組織を構成する分子を攻撃して障害を与えますが、生体の「抗酸化システム」が健全に働いていれば活性酸素は消去され、障害が生じることはありません。

ところが現代社会には排気ガス・大気汚染・タバコ・食品添加物・残留農薬など、活性酸素を発生させる多種多様な原因があふれています。さらには、忙しい現代人の多くが抱えている精神的ストレスまでも活性酸素の発生源なのです。

 

活性酸素が生体の「抗酸化システム」の能力を上回って発生すると細胞は傷害され、多種多様な疾患の原因となります。日本人の3大死因であるがん・脳卒中・心臓病も活性酸素による「酸化ストレス」が原因ですし、糖尿病・自己免疫疾患・パーキンソン病などにも「酸化ストレス」は深く関わっています。

 

そのような状況にある現代人が健康を保つには「抗酸化力」を上げることが欠かせません。そのために有効なのが「抗酸化物質」の摂取です。ビタミンC・Eなどをはじめ各種カロテノイド、ポリフェノールなどのフィトケミカルがこれにあたり、通常は野菜などの食物から摂取することになります。

「どの野菜にどのような抗酸化物質が含まれているか」ということはデータとしてかなり蓄積されていますので選択は可能です。ですがもう一つ重要なのが「その野菜がどんな環境で栽培されたか」ということです。

 

「ホウレンソウの旬はいつでしょう?」という質問に、あなたは自信を持って答えられますか?

 

現代の農業は、本来冬の野菜であるホウレンソウを一年中供給できる能力を備えるに至りました。「季節に関わらず、短期間で一定の生育をさせる」という栽培技術は目を見張るものがあります。経済成長に伴う人口の増加に対応するには確かに必要なことだったでしょう。ですがそれによって失ったものは余りに大きいのです。

 

ホウレンソウに含まれるビタミンCを例にとると、1950年のホウレンソウには100gあたり150mg含有されていました。それが1982年には65mgになり、2000年には35mgになっています。約5分の1にも低下していることになります(文部科学省発行『日本食品標準成分表』のデータより)。これには多様な原因があるとされていますが、大量の化学肥料を用い、早く生育し収穫できる品種にシフトしたことも大きな原因の一つといわれています。

 

南房総の豊かな陽光を浴びて、最適な土壌で最適な季節に育てられた野菜たちには、その野菜が持つ最大限のポテンシャルが表現されています。本来持ちうる栄養素や抗酸化物質が失われることなく凝縮されているのです。

 

アンチエイジング医療を担う専門家として、そのような安全・有用な食物の生産と普及を目指す「南房総エコトピア計画」を強く支持します。

 

                                                                                                       森永宏喜

 

フードピラミッド

米国USADAが作った癌対策用のフードピラミッドです。にんにくが頂点で南房総エコトピアで取り扱う作物も入っています。この外にもいくつかのピラミッドが作られています。日本での日本式の食生活用のピラミッドも作られています。

 

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